sappalenia’s blog

無責任な戯言です

思考記述2

 以前の記憶を思い返すことが増えてる週間が来てる、その一例。

 小学生の頃、近所の犬が下校途中眠そうにしてたのを見て立ち止まりしゃがみ込み、お手と言ってみた。可愛いその子はお手と言われてすぐに反応して手を渡してくれたり、再三言われてやっと渡したりした。私はその眠そうにしながらも手を差し出してくれる狐色の犬がとても可愛くてたまらなかった。しゃがみこんで右の手の平をその子の顔の近くに静止させ、お手と言うと眠たげな細い目で、緩慢な動作で、手を持ち上げて私の手の平の上に乗せてくれた。たしか午後の3時頃、風が緩やかに吹いていて晴れていて、周りには誰もいなかった。人の家のしかしたまに勝手に触ってた犬だったが、その瞬間の応答にはたまらないものがあった。ものすごい静かで周囲が午後の黄色寄りの暖色で明るくて私とその犬だけで、私は学校帰りで、その犬は昼間の緩やかな時間を表すかのように眠たげで鈍い動きだった。そんな中、私とその子だけの密かなやりとりには何とも言い難い特別感があったし、午後の緩やかな時間の象徴があった。私は身震いすらしそうな体の芯からくる感動由来のジーンとする陶酔感を感じ、この時間がずっと続いたならと思うがそれが叶わないことも知っていたし、立ち上がりただただ名残惜しい気持ちで地面に腹這いになって寝座る体勢のその犬の、私の帰り道の続きをジッと見つめている眠たげな瞼の下がった瞳を愛おしく、言い得ぬ暖色の気持ちを胸に見るのをやめ、残り少ない帰路についたことを覚えている。

 そんな小学校低学年の午後、今でも忘れられない大切な記憶。あの静かな時間が私の精神の常であったなら良いのにと思う。