sappalenia’s blog

無責任な戯言です

止まっているものへの美しさ

 自身は気に入った曲を見つけるとそればかりを聴き続ける習性があり、それは何十回とかそういう時もある程度。それを自覚して、なぜ自身はその人の他の曲をもっと聴き漁ろうとしないのかと我ながら疑問に思う。

 結局それは幻滅するのが怖いからだと思う。一度知った果実の甘味を忘れ去ってしまうことが怖いのだと思う。それはつまり、他の曲を聴くことが一度手に入れた安全基地を手放すことと同義でそれは既に私には冒険なのだろうということ。ボタン一つで再生でき、何分待てば終わる行為だというのに、現代において。だが恐れてしまうことへの不可解さを我が事ながら感じずにはおれない。

 自身は何を恐れているのだろうか。それはやはり安全基地の喪失なのだと思う。一度手にした誉なるものを変質させない方法とは手にした瞬間に探索を放棄する事だと、私は考えているのではないだろうか。そうすることでその物事への相対化を打ち止めにしようという態度、大理石の彫刻のように腐食しない永久の美たらしめんと望む態度。

 要するに私は磐石な安全基地というものを持っていないのだと思う。